ジャック・アタリ氏に関するメモ
今こそ連帯が必要である。
パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ「他者のために生きる」という人間の本質に立ち返らねばならない。
協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきだ。
利他主義という理想への転換こそが人類のサバイバルの鍵である。
ポジティブな言葉の多いジャックアタリ氏にアナウンサーはその楽観主義ともいえる言葉の根源はどこから来るのかと質問する。
それに対してアタリ氏はこう答える。
まずポジティビズムはオプティミズム(楽観主義)とは異なります。
たとえば観客として試合を見ながら「自分のチームが勝ちそうだな」と考えるのが楽観主義です。
一方ポジティビズムは自らが参加し「うまくプレイできればこの試合に勝てるぞ」と考えることです。
今の状況は「ポジティブ経済」と呼ぶものに向かうとても良いチャンスだと思っています。
ポジティブ経済とは長期的な視野に立ち、私が"命の産業"と呼ぶものに重点を置く経済です。
生きるために必要な食料、医療、教育、文化、情報、研究、イノベーション、デジタルなどの産業です。
生きるのに本当に必要なものに集中することです。
Q.共感と利他主義を訴えるジャック・アタリ氏のことを人は無私的な聖人と呼ぶかもしれませんがそこはどう思いますか?
A.いえいえ、利他主義は合理的利己主義にほかなりません。
自らが感染の脅威に晒されないためには他人の感染を確実に防ぐ必要があります。
利他的であることはひいては自分の利益となるのです。
また他の国が感染していないことも自国の利益になります。
たとえば日本の場合も世界の国々が栄えていれば市場が拡大し、長期的にみると国益につながりますよね。
アナウンサー:利他主義とは他者の利益のために全てを犠牲にすることではなく、他者を守ることこそが我が身を守ることであり、家族・コミュニティ・国、そして人類の利益にもつながるのですね。
アタリ氏:その通りです。利他主義とは最も合理的で自己中心的な行動なのです。
経済を全く新しい方向へ変化させないとこの闘いは長期的に見ると勝てるとは言えません。
戦時中の経済では自動車から爆弾や戦闘機へ企業は生産を切り替えなければなりません。
今回も同じように移行すべきです。
ただし、爆弾や武器を生産するのではありません。
医療機器、病院、住宅、水、良質な食料などの生産を長期的に行うのです。
多くの企業で大規模な転換が求められます。
果たして私たちにできるかわかりません。
パンデミックの後、人々が再び以前のような行動様式に戻ってしまうかもしれないから。
Q.「歴史を見ると人類は恐怖を感じる時にのみ大きく進化する」とおっしゃっていましたね。私たちはまさに今、進化するためにこれまでの生き方を見直すべきだと思いますか?
A.まさしくそう思います。
前進するために恐怖や大惨事が必要だというのではありません。
私は破壊的状況はのぞみませんし、むしろ魔法によって今すぐにでもパンデミックが収束して欲しいです。
しかし良き方向に進むためには今の状況をうまく活かすしかありません。
利他的な経済や社会、つまり私が「ポジティブな社会」「共感のサービス」と呼ぶ方向に向かうために。
しかし人類は未来について考える力がとても乏しくまた忘れっぽくもあります。
問題を引き起こしている物事を忘れてしまうことも多いのです。
過去の負の遺産を嫌うため、それが取り除かれるとこれまで通りの生活に戻ってしまうのです。
人類が今そのような弱さを持たないよう願っています。
私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要があります。それがカギです。
誰もが親として、消費者として、労働者として、慈善家として、そしてまた一市民として投票を行う時にも、次世代の利益となるよう行動を取ることができればそれが希望となるでしょう。
緊急対談
パンデミックが変える世界
〜海外の知性が語る展望〜
より